頭皮、皮膚に滞在する皮膚常在薗の働きを抜粋して美容に関係することと、私がなぜ湯シャンプーをススメるかを紐解いていきます。

1)人間は常在菌と共存共栄関係

日本の現状では、常在菌はあまり意識されていない。そればかりか、ひとくくりに「菌なんて汚い」といれ、抗菌、無菌グッズが流行する。しかし、滅多なことでは、人間は菌と縁を切れない。前章では腸内常在菌にスポットをあてたが、皮膚上にも菌はたくさん棲んでいる。「腸内は仕方ないとして、皮膚にいるのはどうも気持ち悪い。毎日風呂に入ってゴシゴシこすればいなくなるんじゃないか」という人もいるかもしれない。確かに、風呂から上がった時にはずいぶん減るのだが、それでもしばらくすると身体は元どおり菌で覆われる。あなたの手、足、お腹、そして顔も、すっかり菌だらけになるのである。その数、皮膚全体で一兆個。腸内と同様、常在菌の種類や量は、人によって異なる。また、同じ人であっても、菌種や菌量の変動がある。その変化が 「お肌の調子」を左右しているわけである。あなたの皮膚がしっとりつやつやしているのならば、表皮プドゥ球菌という常在菌がとても元気に暮らしている証拠だ。暮らしというのは、必要なものを取り入れ、不要なものを出すことで、この場合は、皮脂や汗の成分を取り入れ、酸を出すのである。腸内常在菌と同様、他のもののことを産生物質とよぶ。平たくいえば、表皮プドウ球菌は、皮脂や汗を「エサ」にし、酸生の 「オシッコやウンチ」をして皮膚上で暮らしているということである。このオシッコやウンチが皮膚上にあり、それが、さらに汗や皮脂と混ざって、皮膚はしっとりするのだ。菌だけでも気持ち悪いのに、そのオシッコとウンチなど耐えられないと、やっきになって身体を洗い、抗菌パウダーか何かをりかけたとしよう。あなたの皮膚は、カサカサとなり、かゆみが出たりする。あるいは、部分的に異常に脂っぽくなってきて、プップッができたり、ジクジクしたりし始める。その状態は、表皮プドウ球菌とは違う種類の菌が増殖し始めた証拠で先述したように、しっとりつやつや肌に多く棲む表皮プドウ球菌の産生物質は弱酸性であり、皮脂の脂肪酸とともに、皮膚表面を弱酸性に保つ。病原菌の多くはアルカリ性を好むから、弱酸性に保たれた皮膚に付着しても、そこで増殖したり皮膚内部に侵入したりはできない。つまり、皮脂と表皮プドウ球菌の産生物質は、皮膚のバリアの役目を果しているのだ。「菌なんかいやだ!」と無菌をめざして身体中の皮膚を洗いまくったとすると、表皮プドウ球歯が少なくなり、皮膚はアルカリ性に傾き、外からアルカリ性を好む病原菌が付着し、増殖を始めてトラプルを起こすことになる。

2)皮膚常在菌を育てる風呂はカラスの行水で

体臭ゼロをめざすため、だれもが風呂で熱心に身体を洗う。日本人ほど、風呂に入り、せっけんやボディーシャンプーやシャンプー、リンス類を大量に使う国民も珍しいのではないかと思う。ほぼ全員が毎日ゴシゴシ洗っている。それだけ洗剤が流れることも環境に対して悪そうだが、自分の身体にもあまりよくない。もちろん、皮膚常在菌にはとても悪い。ほとんど菌虐待といってもいい。

「毎日身体中ゴシゴシ」は、とても無駄なことをしていると自覚した方がよい。育菌的発想における正しい風呂の入り方を学ぼう。表皮の一番上の角質層が、毎日少しずつはがれることを思い出してほしい。身体には、自分の皮膚を新しくつくる力がある。だから、この自然にはがれる層を、さっとシャワーで流したり、湯舟に浸かるだけでも十分きれいになる。ナイロンタオルなどでゴシゴシこすると、まだはがれ落ちる準備のできていない表皮まで傷つける。どうしても体臭が気になる人は、前出のアポクリン腺の分布する場所を着潔に保つよう心がければいい。この箇所に加えて、一日中靴と靴下のなかで蒸れてしまった足先、特に足の指のあいだ、それから、腸内常在菌の出口である肛門周辺を注意して洗えばいい。アポクリン腺分布とも重なるが、アクネ菌と皮脂腺の多いおでこも注意箇所である。毎日風呂に入る人は、普段は、まず身体全体にシャワーを浴びるか流し湯をかけ、この数ヶ所だけをささっとせっけんで洗い、後はざっと流して湯舟に入れば十分だ。メークを落とした顔についても、こすり洗いは避けたい。さっと風呂に入るだけで、皮膚表面では常在菌の90パーセント近くがいなくなるという。

風呂から上がってしばらくすればまた元どおりに増えるのだが、この時に、ゴシゴシこすって表皮を傷つけ、皮脂の出も悪くなってしまうと、皮膚常在菌のバランスは崩れる。強い味方の表皮プドウ球菌が少なくなり、黄色プドウ球菌が増えて、かゆみやアトピーなどを引き起こすことにもなりかねない。そこまでいかなくても表皮がささくれ立てばカサカサになる。さらに皮脂が出にくくなり、ますます肌が乾燥する。皮脂腺や汗腺もうまく働かず、皮膚常在菌も育たなくなるという悪循環に陥る。昔は、カサカサ、かゆみは老人特有の悩みとされていた。これは、老化現象の一つで、皮脂の出方が少なくなるためにカサカサしてくる、ごく自然なことである。ところが、この現象が今は若い女性に多くなっている。明らかに洗い過ぎが問題なのだ。そんなに活動していないのに、毎日全身くまなく泡を立ててゴシゴシやれば、カサカサになるのは当たり前である。くれぐれもさっと洗うことを心がけ、活動の少なかった日は風呂に入らない方がいい。

3)今までのスキンケアでは常在薗はかやの外

自然のなかで毎日いい汗をかいて過ごせたら、必然的に腸内常在菌も皮膚常在薗もバランスがよくなり、健康で、生き生きとした美しい肌を保てる。しかし、現代日本で社会生活をしていれば、毎日いい汗をかいてもいられない。疲れがたまり、肌はくすんでくる。あるいは、いろいろな刺激に敏感になって、肌になんらかのトラブルが起きる。女性はもちろん、いまや男性もスキンケアをし、エステにも出かける。

肌は一人一人違うし、また、同じ人でも、時によって、また非常に狭い「顔」というエリアのなかでも、おでこと小鼻は脂性だが、頬はカサカサ、など状態が異なる。思春期から始まって、多くの人が肌についての悩みをもつ。アトピーを含め、深刻な状態もある。本当は、毎日楽しく暮らしていれば、多少どこかがカサカサしていようが、小鼻の毛穴がちょっと黒ずんでいようが、まったく問題はないのである。だが、当事者本人にしてみれば、わずか一平方ミリメートルに満たない部分の黒ずみであっても、何をおいても解決しなければならない大問題となる。それが解決されなければ、ご飯もおいしく食べられないし、友だちと話していてもどこか引け目を感じてうつむきがちになる人もいるらしい。「そんなところだれも気にしないよ」、「楽しく過ごしていれば、きっと肌もきれいになるよ」といったって無駄なのだ。本人が気になってしまえば、とことん気になる。引きこもりがちこなり、運動不足が新陳代謝を阻害してさらに肌の状態を悪化させるという事態も決して珍しくない。身体に関する悩みは心の悩みにつながるデリケートなものとして、その人の慨に寄り添って考えていかなければならない。

そういう視点をもって、この章では、多くの人が求める生き生きとした肌の実現を考えてみたい。

まず、ごく一般殺的な肌のお手入れ、いわゆるスキンケアを振り返ってみよう。スキンケアは、大きく分けると、洗顔と、その後、何かを肌につけるという!2段階になろう。洗顔は、スキンケアの基本中の基本といわれる。化粧をしていたら、夜はその化粧品をすっかり落とす。まず、油性のクレンジングクリーム、クレンジングオイルなどを2使って落としそこからまた、洗顔せっけん、洗顔フォーム、などを使って洗う。どちらか1段階のみの人いるが、化粧をしている女性の多くはこの2段階の洗顔を常識とし、さらに、あとの段階の洗顔を2回繰り返す人もいるようだ、とにかく毛穴に入った汚れも落とさなきゃと、ブラシまで使って洗う入もいる。肌をこすることはよくないといわれるようになり、せっけんなどはよくよく泡立て、それが面倒な人は最初から泡になって出てくる洗顔フォームを使って、なるべくやさしく肌を包むように洗うのが現在主流のようだ。それでも、この洗う段階で、

「あなた、そんなに汚れているんですか?」

と聞きたくなるほど、どうも洗い過ぎているようにしか思えない。洗えばさっぱりするのは確かだが、さっぱりし過ぎて潤いがなくなる。多くの人が、洗いっぱなしではカサカサしたり、肌がつっぱるから、洗顔後すぐにスキンケア第2段階に突入する。普通、化粧水を使って水分を補給し、乳液やクリームで油膜をつくり、内側からの水分の蒸発を防ぎ、保水力を高める。さらに、美容液をぬる人もいる。細胞同士にできたすき間を埋め、細胞間物質をつくることで、いわゆる肌のハリを取り戻すというものや美白成分を含むものが多いようだ。だいたいここまでが毎日のスキンケアであり、さらにマッサージもさかんだ。毛穴の汚れをとり、皮膚のたるみをなくすという目的が主のようだ。前者は皮膚そのものに働きかける作用であるが、後者は、皮膚というよりも、皮膚の下の筋肉に刺激を与え、血行をよくするためのものといった方がよいだろう。

他にもスキンケアにはパックなどさまざまなテクニックがあろうが、こうやってみてくると、すべて、皮膚に対して、外からなんらかの化学的物質や物理的刺激を与えることによって、皮膚の細胞そのものへのよい影響をもたらそうとすることばかりである。ここで、私としては、「何か忘れているものがありませんか」といいたいそう、常在菌の存在である。洗って、こすって、ぬって、筋肉を鍛える。つまり、今までのスキンケアでは、皮膚常在菌は無視されていた。

この現状をあなたの頭皮、髪で想像してみてください。

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